7月5日(日)の午後、なかの真実さんをお迎えして「星と緑の原画展」のギャラリートーク を開催いたしました。
◇最初に、『3年の星占い 2024-2026』(全12冊)(石井ゆかり/著 すみれ書房)のお話から。
2023年4月、当店にて開催の『ねことことり』(たてのひろし・作 世界文化社)原画展初日に、真実さんに会いにいらしたすみれ書房の編集者 飛田淳子さん。人気の石井ゆかりさんの「3年の星占い」シリーズ4作目・2024-2026版の装画の依頼でした。装画のイラストレーターを探し続け、白羽の矢が立ったのがなかの真実さん。真実さんにとっても石井ゆかりさんの物語や言葉をどのような絵で表現するか新しい体験だったそうです。
◇次は、デビュー作の『みどりのがけのふるいいえ』(世界文化社)のお話。

世界文化社の編集者 渡邉侑子さんから月刊誌「おはなしワンダー」2021.7月号として刊行され、その後2023年5月に単行本になった作品です。
ネコが主人公のちょっとシュールな物語。
ネコが暮らしているのは高い崖の古い家。この土地では、昔からふしぎなことが起こると言われているのですが・・・ある朝、色とりどりに輝く石のようなものを見つけたネコにもふしぎなことが起こります。
実は、ネコが住んでいるところはトロルのからだだったのです。トロルは大きすぎて誰にも気づいてもらえなかったのですが、ネコが住み着いてくれたことによって、変化が起こります。
トロルと出会ったネコは、知らず知らずのうちにトロルから恩恵を受けていたことに気づきます。
「出会い」や人との関わりによって、自分が住んでいるところや人を好きになってほしいなという願いを込めて描いた作品です。
絵を描くために、絵本作家かわしまはるこさんに教えていただき、一緒に飯能にある崖を取材しに出かけました。かわしまさんにアドバイスを受け、杉やヒノキなど植物の特徴を遠景で見たとき、近くで見たときにどう見えるかを観察しました。遠景で見たときの影の違いなども。
ネコの家もお菓子の箱で作って、中に光がどのように入るのか、トロルの影がどのように見えるのかなどを実験しました。
*おまけの話:絵の中の謎の生きものが描かれているのですが、それはトロルのイマジナリーフレンドとのこと。探してみてくださいね。
◇『あおいことり』(たてのひろし・作 世界文化社)のお話。

『ねことことり』の続編である、『あおいことり』では、作者のたてのひろしさんからさらに自然をリアルに描いてほしいとの希望で2年間取材を重ねました。長野県飯盛山、山梨県瑞牆山(みずがき山)、小渕沢、自然公園・・・草原のシーンを描くために、草原にはどんな植物があり特徴があるかなど資料を作り、その中から絵にするのにはどれを使うかを選んだそうです。乾燥標本のファイルの見せてくださいました。山を鳥の目線で観察してみたり、夜明けのシーンも塔の岳に登り、実際に体験したり・・・この期間に車の免許を取得し、実際に見て、スケッチして資料の整理を繰り返しました。実際の資料ファイルを見た皆さんから驚きの声が上がりました。真実さんの作品作りにかける心意気を感じます。

安曇野の「森のおうち」の学芸員さんからゆずっていただいたコブシの新芽
絵本のために役立てばと、コブシの新芽をゆずっていただきました。その成長を観察し、2年後に「森のおうち」にお返ししたというお話も素敵でした。
そのコブシの絵は、最後のページに描かれています。そして、表4(裏表紙)には、大きく育ったコブシの木とともにネコの家族の変化も・・・ぜひ、裏表紙までじっくり読んでくださいね。
◇『こひつじのくびかざり』(小学館)のお話。
原画展が始まる前日6月24日に刊行されたばかりの最新作『こひつじのくびかざり』、この絵本は、これまでの細密画とは少し印象が変わり、やわらかい空気をまとったような絵になっています。編集者の田中明子さんから作品にあう表現であれば、細密画でなくても大丈夫とアドバイスを受け、新しい画風に挑戦しました。こひつじのふわふわやあたたかさなどを表現できるような紙や筆を選びました。
もちろん、こひつじの観察に千葉県のマザー牧場や北海道の羊牧場で取材させてもらいました。真実さんは、牧場の草原にはたくさんの花が咲くのかなと思っていたそうですが、実際に牧場に行ってみたら、ホソムギ、カモガヤ、クローバーの3種類の牧草を植えて羊たちに食べさせていることを知りました。そこで絵本の草原シーンには、その3種類の牧草を描きました。
今回の絵本で、現実には見えない感情を色で表現することに挑戦したそうです。こひつじの気持ちを感じる色で着彩しました。
表紙の絵
(左)真実さんが表紙案として出した絵(右)デザイナーの藤井瑶さんが選んだ表紙の絵
表紙の背景の色も悩みましたが、温かみを感じる乳(にゅう)の色にしました。
子どもの頃好きだった絵本『ころわんと ふわふわ』
(間所ひさこ/作 黒井健/絵 ひさかたチャイルド)
絵本制作中、編集者さんから「5歳の頃のご自分を思い出してください」となんどもアドバイスを受けたそうです。
そこで子どもの頃に読んでいた絵本を読み返しました。それが一番好きだった『ころわんとふわふわ』です。ころわんが小川を飛び越えるシーンが好きだったと真実さん。その達成感と爽快感は、『こひつじのくびかざり』にも通じるものがあります。
小学館の情報サイトにて真実さんのインタビュー記事が掲載されています。絵本ができるまでの様子が詳しくわかります。ぜひご覧ください。⬇️
なかの真実さんが絵本を描くようになってから5年間の蓄積された資料や作品のお話をお聞きし、作品に取り組む真実さんの真摯な姿勢に感動しました。
なかの真実さん、世界文化社さん、すみれ書房さん、小学館さん、ありがとうございました。
ご参加の皆さん、ありがとうございました。
*7月12日(日)、「星と緑の原画展」が終了いたしました。
お越しくださった皆さん、真実さんの絵をお迎えくださった皆さん、ありがとうございました。
今後のなかの真実さんの作品が楽しみですね!




