9月4日(日)、台風の進路も気になりつつ、久しぶりにお天気に恵まれたイベントとなりました。『れいちゃんのきせつのせいかつえほん』(のら書店)の作者すとうあさえさんと高橋和枝さんをお迎えしてギャラリートーク&サイン会を開催しました。
すとうあさえ・文 さいとうしのぶ・絵 のら書店
すとうあさえさんは、のら書店から『子どもと楽しむ行事とあそびのえほん』(さいとう しのぶ・絵)を出されていましたので、2016年に次の本の案が出た時には、小さい人たちの実用書『子どもと楽しむくらしのえほん』、ぞうきんの絞り方、ちょうちょ結びのしかたなど、知っていると役に立つことや技などを紹介する絵本を作ろうと思ったそうですが…
その後、ひとつの家族が季節の移り変わりとともに暮らしていくようすを描こうというシンプルな形の絵本に変わりました。
すとうあさえ/文 高橋和枝/絵
すとうあさえさん(右)
すとうさんは小さい頃、ひとり遊びが好きな子どもだったそうです。庭で土いじりをしたり、雑草で遊んだり、三輪車を人や物に見立ててひとりで遊んでいました。その頃の風や土の匂いを五感で記憶しているそうです。とくに夜の寂しい匂いが記憶されていて、それは今でもその感覚があるというお話が印象的でした。
すとうさんが関わっている幼稚園やお孫さんたちをみていて気になるのは、IT化が進み小さい子どもでもタブレットの扱いなどが上手で驚くけれど、土遊びなど五感を揺すぶる体験も大切なので、バランスをとってほしいとも話されました。
この絵本が、物語の絵本になって、生活スタイルを伝えられたことは良かったとも語られました。
幼稚園の大ケヤキの画像や散歩で拾った葉っぱに穴を開けて飾っている様子や、様々な自然とのふれあいの画像を見せていただきました。「散歩していてもアンテナを立てていると、いろんなものに気がつくのですよ」とすとうさん。
今年のお月見は9月10日です。月にまつわる興味深いお話をしてくださいました。
日本は四季の移ろいの美しい国。忙しい毎日ですが、少しだけ月を見たり、葉っぱを拾ったり、手の届く範囲で自然を楽しんでください、と話されました。
すとうさんのお話を伺って、この絵本はレイチェル・カーソンの『センス・オブ・ワンダー』の世界そのものであることに気づきました。
【おまけのお話】絵本の中にのらねこのしまちゃんが登場しているのですが、しまちゃんとれいちゃんの家族とふれあいの変化にもストーリーがあるそうですよ。しまちゃんに注目して絵本を見てくださいね🐱
後半は、絵を描かれた高橋和枝さんのお話。
編集者の佐藤友紀子さん(左)と高橋和枝さん
高橋和枝さんは、作品によって画材が異なります。コピック、水彩、岩絵の具…そして、今回は色鉛筆を選ばれました。今まであまり人物を描いたことがなかったので、使い心地が自由で安心感のある色鉛筆にしようと思ったそうです。でも、実際に使い始めてみると、意外と気難しい画材だったとのこと、紙と色鉛筆の相性があることに気づきました。ラフで描いていた紙より高級な紙だと色鉛筆が紙の目に入ってしまい… 描いたものを一回消しゴムで消してみたり、試行錯誤を繰り返したそうです。
本のテーマがライフスタイル全体を伝える絵本に変わっていき、高橋さんご自身が知っている生活がこの絵本のなかにあると感じられたことが良かったと話されました。
どんなことがあっても家の中に日があたる一瞬があることを描きたいと思った、という高橋さんの言葉が心に残りました。そう思って絵本を読み返すと、どの家の中のシーンにも日の明かりを感じることができます。そんな高橋さんの想いが、私たちにどこか懐かしく温もりを感じさせてくれるのだと思います。
高橋和枝さんの誠実なお人柄がそのまま伝わるお話でした。
お二人の様々な想いがつまった『れいちゃんのきせつのせいかつえほん』、心豊かな生活を送るヒントがいっぱいつまっています。ゆったりと読んでくださいね。
お話の後はサイン会。和やかな時が流れました。
すとうあさえさん(左)と高橋和枝さん(右)
種村もご一緒に
すとうあさえさん、高橋和枝さん、編集者の佐藤友紀子さん、のら書店さん、ありがとうございました。
参加してくださった皆さん、ありがとうございました。
*原画展は9月18日(日)まで。
*【高橋和枝さん在廊日】 9月14日(水)、9月18日(日)どちらも午後。