10月12日(土)汗ばむほどの秋晴れの午後、京都から前田まゆみさんをお迎えして、『すうがくさんぽ』(あすなろ書房)『えほん般若心経』(春秋社)のギャラリートークを開催いたしました。ようやく、中庭を開放し、風を感じることができる季節になりました。
『えほん 般若心経』は、写経をしていた88歳(当時)のお母様のためにやさしい言葉に絵を添えて作られた手作りの小冊子で、その後仏教の本を多く出されている春秋社で絵本として刊行されました。この日、シンギングボウルの音を入れながら、『えほん 般若心経』を読んでくださいました。
前田さんは、10代の大学生の頃から「般若心経」に興味があり、いろいろな本を読み考え続けていたそうです。お母様から般若心経のことをわかりやすく教えてほしいとの希望に応えるべく、今まで考え感じている内容を、「認識」「悟り」など仏教特有の言葉は避け、やさしい言葉を使った文章と絵で表現しようと思いました。仏教の根幹の考え方である「空」という言葉はそのまま使いました。
絵も、この絵本のために描いた絵は数枚で、多くは今まで折りに触れ描いていた絵がちょうど内容にあったので使われたそうです。何かに使うためではなく自分が感動した光景を時間をかけてじっくり描いてきた絵だったそうです。
『すうがくさんぽ』については、生きているのがつらく落ち込んだ時に、ふと手に取った数学の本から、生きるがゆえの残酷さがない数学の世界にはまり、数学の本をたくさん読み始めました。数学をモチーフにして絵を描きたくなったそうです。
高校の数学の授業に登場する「虚数 i」。「imaginary number(想像上の数)」虚数で数学につまずきました。「ないのにある」まるで般若心経の「空」と同じ・・・
「空」はインドのことばで「スーニャ」または「シューニャ」とのこと。スーニャは数字の「ゼロ」の意味もあるそう・・・
こうして般若心経と数学が繋がっていったのです。
こうしたお話の中で、前田さんが紹介してくださったのが、禅宗のお坊さんでミュージシャンの赤坂陽月さんの「heart sutra」。ビートポックスという手法で奏でられる、とってもクールな般若心経を聞かせてくださいました。リズムがここちよく、うっとり聞き入りました。
もう一つ、紹介してくださったのが『自分とかないからー教養としての東洋哲学』(しんめいP /著 サンクチュアリ出版)。今どきの若者ことばで「仏陀」や「空」を解説している本です。
仏教にまつわる音楽と本を紹介していただきました。本は早速発注いたしました。
仏教も数学も、前田さんにとっては学生の頃から興味を持ち探求し続けていたものなのですね。それが何十年も熟成されて絵本という形で私たちにその世界と出会うきっかけを作ってくださいました。般若心経と数学がつながっていることに気づいた時、新しい世界が広がったような気がしました。生きるのがつらいなって思った時に心の持ちようや物の見方を変えてみたら、心が軽くなるかもしれません。
一人一人とお話ししながらのサイン会
原画の前で記念撮影
「般若心経」「数学」、どちらも難しいイメージがありますが、前田さんのやさしい絵が添えられると、なんだか少し身近に感じることができます。
どちらも、お散歩をするような気持ちで扉を開いてみてくださいね。
素敵な絵に囲まれた中で、光と風を感じながら聞く前田まゆみさんのお話、みなさんと一緒に豊かなひとときを過ごすことができました。
前田まゆみさん、お越しくださった皆さん、ありがとうございました。
原画展は、11月3日(日)まで。皆様のお越しをお待ちしています。