3月15日(土)、『ちきゅうパスポート』(BL出版)の発起人のささめやゆきさん、石川えりこさん、広松由希子さんをお迎えしてギャラリートークを開催しました。
まず、石川えりこさんから、この『ちきゅうパスポート』がどのような経緯でできたのかをお話しくださいました。
2022年2月の戦禍に巻き込まれたウクライナの子どもたちの惨状を目にして、絵本作家さんたちが「何か自分たちにできることがないだろうか」と立ち上がりました。絵本作家のあべ弘士さん、ささめやゆきさん、石川えりこさん、田島征三さん、絵本評論家の広松由希子さん、そしてブックデザイナーの高橋雅之さんやBL出版の落合直也社長も加わり、この企画が始動しました。
当時のささめやさんの熱い思いをしたためた手紙を読んでくださいました。
「つながる」というイメージでジャバラの絵本がいいかもと、ささめやさんがダミーの絵本を作りました。ジャバラの本は製本上なかなか難しく、印刷屋さんと相談しながら、打ち合わせを重ねていきました。パスポートの判型で、製作上の都合で22作品の掲載が決まりました。協力をお願いする作家さんは編集者の広松さん、BL出版の落合さんが選び、「子どもたちに渡したい、想像の国」を依頼しました。絵の左右のこの位置で「隣の国とつながる」ことだけを伝えました。
日本だけでなく、イギリス、スロバキア、ウクライナ、ブラジル、南アフリカなど6か国、20名プラス2組、24名の作家さんが引き受けてくださいました。
タイトなスケジュールにもかかわらず、作家さんからは続々と作品が送られてきたそうです。そして、なんとか1年後の2023年3月に刊行することができました。作家さんの想いが込められた、個性豊かな絵がつながる素敵な絵本となりました。そして、すぐに重版が決まり、初刷り分の売り上げから、ウクライナの子どもたちの支援に寄付することができました。
石川えりこさんが書かれた「まえがき」、ささめやゆきさんが書かれた「あとがき」を、お二人が読んでくださいました。
広松由希子さん(編集)・ささめやゆきさん・石川えりこさん
「子どもたちを守りたい」という強い想いでつながっているささめやさん、石川さん、広松さん。大変な作業だったのでしょうが、「わくわくしながら作りました」と笑顔で語る皆さん。チームワークのよさが、笑顔から伝わります。
ささめやゆきさんの刊行されたばかりのエッセイ集『グーテンベルグの時代に回帰する』(子鹿社)、石川えりこさんからは4月に刊行予定の『きつねの木』(講談社)の紹介もしていただきました。
おまけの記念写真
ささめやさんのあとがきの「・・・こわされたビルは建てなおせなくても、石いっこだけでも運ぶおもいです。」という言葉が、心に響いた方も多かったのではないでしょうか。大きなことはできなくても、この『ちきゅうパスポート』を購入することも「石いっこだけでも」になるのだと思います。この日も知り合いにプレゼントしたいからと複数冊購入してくださる方もいらっしゃいました。この本には、子どもの名前、誕生日などを書く欄もあり、それぞれの子どもにとって特別な一冊になるように工夫されているので、プレゼントにもぴったりです。
編集者の広松由希子さんの制作過程の舞台裏のお話は、臨場感がありました。「一番最初に絵が届いたのは誰でしょう?」という会場への問いかけもあり、大いに盛り上げりました。「それぞれの国の名前も面白いので、見てくださいね」とのこと。
また、作家さんたちは、ウクライナだけでなく世界中の子どもたちのためにと考えているとお話しされました。
作家さんたちの原稿料、BL出版の収益もすべてウクライナの子どもたちへの支援のための寄付とのこと。作家さん、出版社の熱い想いに感動するとともに、続けて寄付ができるよう、皆さんの想いを多くの方に伝えていきたいと思いました。
今、世界情勢はますます混沌としてきていて、自分に何ができるのだろうかと考え込んでしまうことも多いのですが、今回お話をお聞きして、「石いっこだけでも」の気持ちをもちたいと思いました。
ささめやゆきさん 、石川えりこさん、広松由希子さん、BL出版さん、ありがとうございました。
そして、参加くださった皆さん、ありがとうございました。
原画展は、3月30日(日)までです。皆さんのお越しをお待ちしています。