5月17日(日)いせひでこさん ギャラリートーク

5月17日(土)五月晴れの午後、いせひでこさん をお迎えして『絵描き』(講談社)のギャラリートーク を開催いたしました。関東近郊はもとより関西から参加の方もいらっしゃり、会場は始まる前から熱気に包まれました。

この日は、『絵描き』にいたる前のお話をしてくださいました。

いせさんにとって2004年に刊行された『絵描き』(理論社)は、その後『ルリユールおじさん』(理論社 2006年)につながる記念すべき一冊でした。

いせさんはいつもスケッチ帳やハガキ代のノートを持ち歩き、常に心にとめた風景やスケッチしていました。「ぱたぱた帳」はいせさんならではのもので、1988年頃のゴッホの旅などでも風景を長く描くことができるので愛用していました。

「ぱたぱた帳」を広げるかさいしんぺい さん(『ねぇ、しってる?』岩崎書店の作者)

様々なスケッチ帳やメモ帳を見せていただきました。「全部知っていなければ描けないと思い、スケッチしていた。」といせさん。「皆さんも小さなメモ帳を持って歩くことをお勧めします」とも話されました。

1995年、当時飼っていたハスキー犬のグレイの闘病生活が始まり1996年に亡くなるまで、その闘病記録として病気のグレイを描き続けたのですが、それは命そのものを描いているのだと思い、最期まで見届けようと描き続けました。

グレイが亡くなり、悲しくて空ばかり見ていて、行くところ行くところで空を描いていました。それが、1998年に『空のてんらん会』(講談社)になります。

1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災もいせさんにとって大きな出来事でした。

建物など表面的なものはいずれ復興されるだろうが、人の心など見えないものはわからなくなってしまうだろうから、テレビなどで伝えられる映像ではなく現状を見ておかなくてはと大震災から2ヶ月後の神戸を3日間、歩き続けたそうです。もちろん、その時は描くことはできませんでした。描かれることを拒否しているようだったと。

3年後、神戸から一通の手紙が届きました。阪神淡路大震災復興支援チャリティーの「1000人のチェロ・コンサート」への参加の呼びかけでした。1000人の中のひとりとなって1998年11月に再び忘れてはならない風景の前に立ちました。

その2年後、いせさんにとって初めての作/絵のものがたり絵本『1000の風 1000のチェロ』(偕成社)がでました。鉛筆に水彩で描くというのも初めてでしたし、記念すべき絵本となりました。

偕成社

1986年にでた宮沢賢治の『よだかの星』(講談社)を描いた時に、自分でも気がついたことがありました。よだかが天でもない地でもない自分の生きるところを探しあてたところからゴッホと賢治を追う旅が始まりました。1995年から1996年頃のことです。東北とヨーロッパを何度も行ったり来たりしました。りんご畑とオリーブ畑など共通するものも多く、全部が呼応していました。そして、37歳までのふたりの比較、ほとんど同じ軌跡を歩んだふたりを論じた『ふたりのゴッホ』(新潮社)が2005年にでました。

そんな中でスケッチと記憶をつなげていったのが『絵描き』(2004年刊)だったのです。

『絵描き』には、賢治やゴッホらしき姿や気配を感じますし、ひまわり、リンゴの木、オリーブの木、ゴッホの寝室などその当時のいせさんが見たものや風景や光を感じます。

それぞれの絵の背景を語るいせさん

今回展示することができなかった原画のお話も

『絵描き』『ふたりのゴッホ』がでて、疲れを癒すために娘さんと出かけたパリの旅で、ルリユールの「窓」に出会ってしまったのです。2度目に訪ねた時にルリユールおじさんに会うことができ、『絵描き』をみてもらうと「ゴッホと同じ眼だね」と言われました。そして取材を許してもらったのです。『絵描き』はパスポートとなるような絵本だったと語られました。

『絵描き』の後に『ルリユールおじさん』『大きな木のような人』『あの路』・・・と作品が生まれていきました。

いせさんが全幅の信頼を寄せていた額縁屋さんのお話、『絵描き』の表紙のお話、『旅する絵描き タブローの向こうへ』(文藝春秋)のお話・・・たくさんの絵に関するお話で盛り上がりました。

かさいしんぺい さんからのプレゼントの「絵描き」のTシャツ

皆さんから「わー」と歓声が!

実は、かさいしんぺい さんは『絵描き』の青年のモデルなのです。中の人はいせさんご自身ですが。

皆さんとお話ししながらのサイン会

今回は、“旅する絵描き” いせひでこさん の軌跡をお聞きすることができました。初めての作/絵のものがたり絵本が『1000の風 1000のチェロ』であったことを知りましたし、賢治とゴッホに魅せられた時代のお話は、その行動力、エネルギーに圧倒されました。いせさんご自身が賢治やゴッホに見えたほどです。

『絵描き』は理論社、平凡社、講談社と出版社が変わりながらも生き続けている稀有な絵本です。二十歳前後の自分探しをしている青年たちに届いたらいいなと思います。

今回もいせひでこさん の絵を描き続ける姿勢にたくさんの元気をいただきました。

いせひでこさん 、かさいしんぺいさん、柳田邦男さん、ありがとうございました。
参加くださった皆さん、ありがとうございました。

原画展は、5月31日(日)まで。

最終日 5月31日(日)の14時から17時まで、いせひでこさん が在廊してくださいます。
皆様のお越しをお待ちしています。

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