ありがとう! エリック・カールさん
日本の子どもたちも愛された『はらぺこあおむし』の作者エリック・カールさんが5月23日にお亡くなりになりました。鮮やかな色彩感覚によって「絵本の魔術師」と呼ばれたエリック・カールさん。『はらぺこあおむし』をはじめ、『パパ、お月さまとって!』『くまさん くまさん なにみてるの?』など数多くの作品は、子どもたちの身近なものを取り上げており、自然への愛情に溢れています。エリック・カールさんの作品はこれからも世代を超えて読み継がれていくことでしょう。心よりご冥福を祈ります。
数多くあるエリック・カールさんの絵本の中でも、私のお気に入りは『ことりをすきになった山』です。
エリック・カール/絵 アリス・マクレーラン/文 偕成社
荒れ果てた野原にぽつんとそびえる岩だらけの山。そんな岩山に、ある日、一羽の小鳥が旅の途中に立ち寄ります。小鳥にずっといてほしいと願う山でしたが、小鳥は食べ物や水もない岩山には住めないと答えます。でも、娘にも自分と同じ「ジョイ」という名をつけ、毎年春には山に立ち寄り、歌をうたってあげることを約束します。気が遠くなるほど何代にもわたって続けられるその行為と、岩山に生じた自然の変化が美しいコラージュで描かれています。
「永い年月がもたらす変化のすごさとか、ひとつの命に託された何かが時間をこえてうけつがれていくすばらしさに魅せられて、一人類学者としての夢を描いてみました。」という作者アリス・マクラーレンの思いと、さびしく暗い岩山が緑あふれる明るい山に変わっていく様を表したエリック・カールの力強い絵が私たちの心を打ちます。
一冊の絵本の中にこのような時空を超えた壮大で崇高な世界が描かれていることに感動を覚えるのです。
エリック・カールさんの絵だからこそ、この物語の素晴らしさが子どもから大人にも伝わるのでしょう。