7月13日(土)の午後、『はなびのひ』(佼成出版社)の作者である たしろちさとさんをお迎えしてお茶会が開かれました。
最初に、たしろさんが『はなびのひ』を読んでくださいました。お人柄そのままのゆったりとした優しい声で、心地よく耳に入ってきました。
たしろさんというと、『ぼくはカメレオン』(グランまま社)や「5ひきのすてきなねずみ」シリーズ(ほるぷ出版)など洋風のイメージがありましたが、今回の和風絵本はどのようにして生まれてきたのかのお話をしてくださいました。
たしろちさとさんと編集者の藤本欣秀さん
子どもの頃、「水戸黄門」などの時代劇が好きだったこともあり、江戸の町並みに憧れたり、活気のある暮らしぶりが面白いなと思っていました。大人になって読んだ藤沢周平さんの本も子どもの頃に見た時代劇のシーンと重なり、好きだったそうです。そんなこともあり、江戸好きとなり、いつか和のものに挑戦したいと思っていました。絵巻物のように絵を追っていってお話が流れていくような絵本が作りたいと思われたそうです。
でも、最初に思い浮かんだのは「たぬき」! 「ぽぽん ぽんぽん・・・」という腹鼓の音が聞こえてきたそうです。「ここはお江戸のたぬき横町」なんていう言葉も思い浮かんだとのこと😁
絵本を描くために編集者の藤本欣秀さんと東京都江戸東京博物館や両国花火資料館に行き、屋台が多い町の様子や、外食が多かったので台所は意外と狭くて簡素だったことなどたくさん取材しました。たしろさんのお話を聞いてから絵本を改めて見てみると江戸の暮らしぶりがよく描かれています。
その後、ストーリを追う展開図や俯瞰図、着物を着た動物たちの動作のスケッチなど、膨大なラフスケッチを見せていただき、実際の絵本になったシーンと比べながらお話くださいました。納得するまでなんども描き直す作家さんのこだわりを垣間見ることができました。編集者さんとも妥協せずお互いに納得するまで検討したそうです。
そして、今回の「和の色」についてもたしろさんから実際に使った絵の具を見せていただきながら説明がありました。普段使っているアクリル絵の具に「和」のバージョンがあり、それを使ったそうです。
「和」の色には、「こきはなだ」「つゆくさ」「なまかべいろ」・・・などと素敵な名前の色がたくさんあるのですね。
絵の具は混ぜてもしっくりこなかったので、下地を塗ったり色を重ねたりして工夫したそうです。江戸の町並みはしっとりした色で素朴な雰囲気が、圧巻の花火は光を感じさせる仕上がりになっています。また、日の暮れ方から打ち上げられた花火なので、時間の経過に変わる空の色の変化などもよく描かれています。仕上がるまでには、相当の試行錯誤を重ねられたのですね。
「一番大変だったページはどこですか?」という会場からの質問に、「うーん、やはり俯瞰図かしら」とたしろさん。ぽんきちの後に大行列ができている様子を描いた俯瞰図は、藤本さんのアドバイスで最初たしろさんが描いたものよりもっと引いた構図になっているそうです。ぽんきちが歩いた道筋もわかり、読者には大変見ごたえのある場面です。「画面の中に強弱をつけて描きました」とのこと、確かにぽんきちの家や辿った道沿いの家や店、登場人物(動物?)ははっきりと描かれていて、画面の中にリズムや勢いを感じることができます。この場面も、何度も何度もラフを描かれました。
『はなびのひ』が出来上がるまで5年の年月がかかったのにも納得です。
他にも、子どもの頃のお話や、絵本作家になられたきっかけやデビュー作『みんなのいえ』(福音館書店 「おおきなポケット」)のこと、この先に刊行される本の紹介など話がつきませんでした。
たしろちさとさんのお話でいつも感じるのは、こんなに大変な絵本創作なのにいつもニコニコと「楽しいから」「楽しかったですよ」とおっしゃるのがすごいなって思います。動物の取材にはどこまでもいらっしゃるし、常にスケッチされてるし、本当に楽しんで本作りに向かわれていることが伝わってきて、お話を伺っているだけで元気をいただけます。楽しい様子が絵本から伝わってきてこちらまで楽しくなります。
たしろちさとさん、貴重な資料もたっぷり見せていただきありがとうございました。佼成出版社の藤本欣秀さんもありがとうございました。
そしてお越しくださった皆さんもありがとうございました。
ファンの子どもたちとお話しながらのサイン会
表紙の原画の前で記念撮影
原画展は8月4日(日)まで。
この夏もこれからいろんなところで花火大会がありますが、一足早くぽんきち君と一緒に花火を楽しみましょう!
皆さんのお越しをお待ちしています🦆