8月6日(火)は74回目の「広島原爆の日」。私たちの今ある平和は、たくさんの人々の言葉では言い尽くせない苦しさや叫びの上になりたっていることに思いを馳せ、一人ひとりができることを考え、それが小さなことであっても実践していきたいと強く思います。
この日の午後、ペルシャ語翻訳者の前田君江さんをお迎えしてトークイベント「イスラーム絵本の扉を開いてみよう!」が開催されました。この企画は月刊「詩と思想」編集委員の青木由弥子さんから声をかけていただき、実現しました。日本にいると遠い世界のように思えるイスラームの国々ですが、前田さんからたくさんの絵本を紹介していただきながら、イスラームの人々の暮らしや文化についてお話を伺いました。
前半は、英米におけるイスラームの絵本を取り上げ、イスラームの風習や文化、暮らしを紹介してくださいました。
まず最初に、イスラームの人々にとって大切な「ラマダン月」の絵本『ラマダンのお月さま』(ナイマ・B・ロバート/文 シーリーン・アドル/絵 前田君江/訳 解放出版社)。前田さんの穏やかな声で読んでくださいました。
ラマダンと聞くと=断食、苦しく辛いものというイメージがありましたが、そもそもラマダン月とはイスラーム暦(太陰暦)第9月のこと、この月にムスリムの聖典コーランが預言者ムハンマドに下されたと言われ、特別な月とされているそうです。ラマダン月の1ヶ月間、日中は飲食は行いません。でも日が暮れてからは、家族や親戚、友人たちとゆっくりと食事をするそうです。老人や子ども、病人などは無理にしなくても良いそうです。辛い断食という宗教行為を通して、お金持ちや権力者も一緒に空腹に耐えることによって、貧困にあえぐ人たちの気持ちを分かち合ったり、みんなでラマダン月を乗り越える一体感や宗教的高揚感があるようです。
前田さんが紹介してくださった本の中には、ラマダン月を楽しむ飾り付けやお菓子のレシピが載った本もありました。イスラームの人々にとってラマダンは決して辛いだけのものではないことがよくわかりました。そして、ラマダン明けを祝うお祭りが「イード」です。日本のお正月のように新しい洋服を着たり、贈り物をしたり、子どもたちはお小遣いをもらいます。さらに困っている人たちへの喜捨も大切なことだそうです。そんな「イード」のことを題材にした『イードのおくりもの』(ファウズィア・ギラニ・ウィリアムズ/文 プロイティ・ロイ/絵 前田君江/訳 光村教育図書)を紹介してくださいました。他にも翻訳されていないラマダンの本の紹介も。ひとまねこざるのラマダンの本もあるのですね。
そして、後半はイスラームでない地域で生まれ育った子どもたちがイスラームを知ることができる絵本の紹介がありました。コーランの本もあります。
難民の問題にもふれ、『石たちの声がきこえる』(マーグリート・ルアーズ/作 ニザール・アリー・バドル/絵 前田君江/訳 新日本出版社)を紹介してくださいました。
海岸で拾い集めた石で表現されたシリア難民の本。悲痛な石たちの声が聞こえてきます。
そして、ティータイムには、中東のお菓子が!
左上は「なつめやし」、左下は「チュルチュヘラ」グルジアのお菓子でぶどうの果汁(果肉)とクルミを混ぜて干したもの、右下は「Noql(ノグル)」アーモンドの切片に砂糖でコーティングしバラ水で香り付けされたもの、右上は日本のクッキーです。珍しいお菓子ですが、なかなか美味しかったですよ。
お茶をいただきながら、皆さんからの質問に答えていただきました。
この日、前田さんからたくさんのイスラームの絵本を紹介していただき、少しイスラームの世界が近くなったような気がしました。国が違ってもその人のスタンダードを理解することが大切という前田さんのお言葉が心に残りました。
前田君江さん、参加くださった皆さん、ありがとうございました。