10月22日(土)秋晴れの暖かい午後、エッセイストでレイチェル・カーソン日本協会会長の上遠恵子さんをお迎えして、「上遠恵子さんのお話を聴く会 vol.2」を開催いたしました。
虫眼鏡で観察する上遠さん
会が始まるまでの間も、「こんなふうに観察するのが楽しいのですよ」とおっしゃり、 自宅の庭から持ってらしたサンゴジュの葉痕を虫眼鏡で観察する様子を見せてくださいました。
『沈黙の春』や『センス・オブ・ワンダー』などを通して、レイチェル・カーソンは「地球は人間だけのものではない」ということを伝えていると話されました。人間は科学技術をもってしまったために、もっと便利にもっと豊かにと自然を破壊するうちに、人間と野生動物との住み分けが壊れてしまった。人間は歩みをもっと確かなものにしていかなくてはならないとも話されました。地球は環境的に危機的な状態なのに戦争なんてしている場合ではないという上遠さんの言葉が胸に迫りました。
『沈黙の春』は60年前に出版されましたが、放射能のことにも警鐘を鳴らしていました。福島の原発事故を体験した私たちには、本質をついた言葉だったのです。60年経った今でも決して古くなく、私たちに警鐘を鳴らし続けているのです。
『沈黙の春』もレイチェルに「センス・オブ・ワンダー」の感性があったから書くことができました。
『センス・オブ・ワンダー』のメインテーマである、「知る」ことは「感じる」ことの半分も重要ではないという言葉。子どものつぶやきや驚きをしっかり受け止め、ともに寄り添い分かち合う存在でありたいと思います。大人自身もセンス・オブ・ワンダーをもつことが大切なのです。
自然豊かなところに行かなくても、身近なところで一つの場所を決めておいて毎日定点観測するのも楽しいですよとのアドバイスもいただきました。
上遠さんが監修された『13歳からのレイチェル・カーソン』(かもがわ出版 2021年刊)と『レイチェル・カーソン物語』(西村書店 2022年10月刊)も紹介くださいました。
かもがわ出版
西村書店
レイチェル・カーソンのことがよくわかります。おすすめです。
最後に、上智大学学長も務めたヘルマン・ホイヴェルス神父がドイツに帰国後、南ドイツの友人から贈られた詩「最上のわざ」を朗読してくださいました。心に深く沁みました。
上品な笑顔が素敵な上遠恵子さん
上遠さんが93歳だとお聞きしてびっくりしました。姿勢もよいし、よく通るお声、わかりやすいお話は、以前と全く変わりませんでした。
戦争中のお話もしてくださり、「平和」に対して「戦争」は嫌だと発信していきたいとも話されました。
以前にラジオ深夜便で上遠さんからお聞きした「強靭な感性」という言葉が印象的で、今でも耳に残っています。「センス・オブ・ワンダー」と聞くと、素直で柔らかい感性を思い浮かべますが、今の不穏な時代に生きる私たち大人は世の中のおかしなことに対してアンテナを張り巡らす強靭な感性も持たなくてはいけないと思いました。
上遠恵子さん、ありがとうございました。
参加くださった皆さん、ありがとうございました。