中嶋香織さんの装丁へのメッセージ

好評開催中の「ティール・グリーンが選ぶ 中嶋香織さんの装丁のおしごと展」もあと1週間となりました。

会場には、10点の原画と作家さんから寄せられた中嶋さんの装丁へのメッセージが展示されています。どのメッセージも中嶋香織さんの装丁のお仕事への尊敬と信頼を感じさせるものばかり。

さすが、作家さん! どなたの文章も素敵で、ぜひ皆さんにご紹介したいと思い、このブログに掲載する許可をいただきました。皆さんのメッセージを読むと中嶋さんの装丁に対する姿勢が伝わってきます。

メッセージを読み、本を手に取るとさらに本のことが愛おしく思えます💖

『若草物語Ⅰ&Ⅱ』北澤平祐さん

『赤毛のアン』北澤平祐

『ノロウェイ の黒牛』さとうゆうすけさん・なかがわちひろさん

『くるみのなかには』たかおゆうこさん 『月夜とめがね』高橋和枝さん

『かくれんぼ』種村有希子さん

「名探偵カッレ」シリーズ 平澤朋子さん

 

*メッセージは、お名前の50音順に掲載しています。

北澤平祐さん】

中嶋さんがふれると、絵はよろこび、かがやき、踊りだし、華やかなパーティーをはじめるのです。しかも、パーティーが終わると、みんなきちんとお片付けをして、お皿洗いもゴミ捨てもいやがらず、しっかり歯をみがき、お行儀よく眠りにつきます。私の絵も中嶋さんにしつけて頂いたおかげで、いい子だねってほめられることが多くなりました。

さとうゆうすけさん

デザインって面白いですね。

絵本デビュー作である「ノロウェイの黒牛」のデザインを担当してくださったご縁で、中嶋さんからそれを教わりました。絵本が形になってきたとき、デザインによって驚くほど絵が雰囲気を変えるのです。同じ絵であっても、ある時は臨場感を、またある時は上品さを感じるのです。

中嶋さんからは、たくさんのアイディアが湧き出してくるので、あれもこれもいいなあとずいぶん迷ってしまいました。「ノロウェイの黒牛」の表紙のデザイン見たときは、文字の形や色、茨の輪を潜って進む黒牛と娘の姿に思わず溜息が出ました。

児童書「夜の妖精フローリー」は、中嶋さんが挿絵の担当として私を推薦してくださったそうです。この素晴らしい物語に引き合わせてくださって本当に感謝しています。表紙の夜の青色を印刷で表現するときのこだわりに、中嶋さんの色に対する感覚が鋭さを感じました。そして何より扉絵の半透明の紙に銀で印刷されたフローリーの美しさといったら。

また一緒に本を作る機会が巡ってくる時を楽しみにしています。

たかおゆうこさん

中嶋香織さんのこと
中嶋香織さんのことを思うと、美しい色彩が降ってきます。色彩にはゴージャスなことにテクスチャも伴っています。唯一無二なデザインは静寂からやってくるに違いありません。きっとデザインを考えている時の眼差しはしんしんと降り積もる雪を見ているように静かで厳かに違いないでしょう。どこか緊張感があって容易には近づけないような。
普段の中嶋香織さんは気さくで可愛くて楽しい人なので仮面ライダーの変身を見ているようで面白いです。

高橋和枝さん

書店で、懐かしいような美しいたたずまいの本に目をひかれました。強い力で物語の世界に誘ってきます。
思わず手にとって、まず装丁家の名前を確かめたのが、香織さんの名前を意識した最初です。抑制のきいた、だけど本を開いたときすこしドキッとするようなコントラストで構築された世界にひとめ惚れました。なので、その何年かあとに『月夜とめがね』の装丁をお願いすることになったときの私の嬉しさといったら!
制作中の香織さんは、とても簡潔に指示を伝えてくれるだけなのですが、時には、描きあげた絵に対して、人物の目線の方向やちょっとしたレイアウトのバランスを「それはちがう」と率直に指摘してくれます。
本質をグッとつかみ、そこに確信をもって形にしてくれるデザイナーさんです。
種村有希子さん

香織さんに著作をデザインしてもらったとき、『このデザインがすき!しっくりくる』という感覚をはじめて味わった。クリスマスの絵本だったのだけど、漠然と『見返しは真っ赤だとうれしいな。イラストはなしで』と思っていたところ、伝えていないのにそのとおり提案されて驚いた。絵本づくりにおいて、デザインがとても大切だという認識も強まった。絵本づくりをはじめてかなり最初の方で、香織さんを紹介してもらえたのは、幸運としかいいようがない。(紹介してくれた編集のKさんにも大感謝です)

香織さんのデザインのどこが好きかというと、なんといってもさりげなくて品がいいところ。出来上がった本をじーっとみていると、何年経っても深く静かに呼吸しているかんじがずっとある。そして、色の感覚を読み取ってくれるところも好き。「ここにこの色」という感覚が似ているのか、ロジカルに導いてくれているのか……とにかく静かにぞくっとする。

なかがわちひろさん

中嶋香織の装幀作品は、凜々しい乙女です。まるで高原の風にそよぐ、たおやかな花のように潔く、品がよく、繊細で、甘い。けれどこの甘さは、砂糖や蜜を加えた甘さではありません。むしろ、ぎりぎりの引き算。

舞台俳優が、あえて小声でささやくことで観客の注目をひきつけて心をゆさぶる技に似ています。もちろん、客席の最後部まできっちり届くことは計算のうえ。つまり、乙女の正体は策士なのであります。高原の花って、けっこう逞しいのよね。

会場にならぶ本のなかには、私が装幀に惹かれて手をのばし、さまざまな角度からためつすがめつしてその美意識に唸ったものがいくつもあります。どんな作品にも麗しい衣をきせてくれるのが装丁家というものですが、やはり相性はある。その相性にも、かなり妬けます。

むむぅ、私もいつか中嶋香織デザインの最高峰を引き出す本をかきたいぞ…と、ちょっぴり黒い野望を抱く次第です。

平澤朋子さん

本の装画を描く時、いつも無数の選択肢の中に迷い込み、その中でお話をきちんと表現できるだろうかという不安があります。

中嶋さんは、「本の佇まい」と「物語」と「絵」が一番いいところで出会える地点を、色々な人や事と息を合わせて併走しながら探しているように感じます。
ですので夢中になりすぎたり、難しく考えすぎて、着地点からずいぶんはずれても「こっちかもしれませんよー」と中嶋さんが目印の旗を立てていてくれている感覚があり、私はいつも安心して物語に没頭しながら絵を描くことができます。
出来上がった本は、どんな時代やテーマでもその物語特有の呼吸が静かに伝わる佇まいで、これから長く生き続けてほしいという希望や愛情が大切に託されている装丁ばかりです。
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「ティール・グリーンが選ぶ 中嶋香織の装丁のおしごと展」は、10月30日(日)までです。
【中嶋香織さん在廊日】  10月27日(木)14:00〜
             10月30日(日)12:00〜
✨素敵な本との出合いがありますように✨

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