おのりえん/作 秋山あゆ子/絵 理論社
「二十四節気の虫のお話」シリーズ三部作です。
都会から緑濃い田舎に引っ越してきたよりさん一家の物語。虫が苦手なよりさんでしたが、否応なく虫の世界に引き込まれていきます。人と虫、それは不思議な世界のはじまりでした。啓蟄から立春まで、二十四節気を章立てに綴られる人と虫のファンタジーです。『虫のいどころ 人のいどころ』は春、『虫のお知らせ』は夏、『虫愛づる姫もどき』は秋から立春まで、季節を巡って虫との出会いと別れがえがかれています。また、小学3年生から年少までの4人の息子さんの健やかな成長も垣間みることができる家族の物語でもあります。
虫がこわくて苦手だからこそ、よりさんは虫と出会うたびに名前や種類、生態などを昆虫図鑑で調べました。飼ってみたりもしました。そして気付かされます。たくさんの「虫が教えてくれること」に。
初めて飼って育てたヒョウモン蝶と、次の春に再び巡りあって喜びに打たれる様子が印象的でした。
やってくるこれからの春は同じことの繰り返しではないよと、身を以って教えてくれているようです。もしあなたが新しい気持ちを持ち続ければ、これからも新しい発見にわくわくできるよ—そう伝えて、ヒョウモン蝶は、務めを果たしたように、すーっと、飛びたって行きました。(「虫愛づる姫もどき」より)
秋山あゆ子さんの虫への愛にあふれる精緻な装画や挿絵も素晴らしく、おのりえんさんの虫の世界がよりリアルに伝わってきます。虫が苦手な方でもリアルだけど愛嬌のある秋山さんの虫たちの原画の前では、じいっと見入ってしまうほどです。
*原画展は5月8日(日)までです。ぜひ、美しい原画をお楽しみください。