10月16日(日)、お天気にも恵まれ、中嶋香織さんのトークイベントが開催されました。
本好きな方、「装丁」に興味のある方、編集者さん、作家さん、画家さんなどたくさん参加してくださいました。
まずは、「装丁のおしごと」についてのお話から始まりました。
「赤毛のアン」を何種類か並べて
装丁のおしごとといっても、大人の本、子どもの本、絵本、読み物等々、いろんな関わり方があるそうです。
文章と絵があり、本として整えるだけの場合や、原稿を読み、画家を編集者に推薦するなど本作りの最初から関わることも。
中嶋さんは、児童書は寄り添う気持ちを大切にしたいのでしっかり読み込むそうです。物語に引っぱられながらも、立ち戻り、読者寄りの立場で客観的に見て装丁していますとも話されました。
表紙が物語の入り口になっていないといけない、見返しも物語の導入部だから大切なんですよとも。見返しは紙の質も変えたりするなどこだわっているそうです。紙の本の魅力ですね。
私が11年前に中嶋香織さんに出会ったときに、中嶋さんの装丁だと知って感動した「グリーン・ノウ物語」。改訂版を作る際に作者のボストンさんの息子さんが描いた絵を表紙にしたのですが、少し硬質な感じがしたので見返しにボストンさんが孫のために作ったパッチワークのキルトを施したそうです。だから、読者は表紙をめくったときになんともいえない懐かしさと温かみを感じ、一気に時空を超えて物語の世界に入っていくことができるのですね。
今回原画を展示させていただいた本を始め、会場に展示されている数々の本の装丁のエピソードをお話しくださいました。その具体的なエピソードに皆さん、「なるほど!」と頷きながら聞き入りました。
『くるみのなかには 』は原画を見ながら
作家、画家、編集者、そして装丁家がいて本が完成することがよくわかりました。私たちが何気なく手に取っている本には、読者にどのように届けたいかという装丁家の熱い思いと工夫が込められているのです。「装丁家は、一番最初の読者なんですよ」という中嶋さんの言葉が印象的でした。
展示されている本を手にとって、表紙はもちろんカバー、帯、見返し、扉絵などじっくりご覧になってください。思いがけない発見や驚きがありますよ。紙の本の面白さを再発見することでしょう。
装丁のおしごとの奥深さに胸が熱くなりました。
トークが終わっても会場は、本を愛する人たちの熱気にあふれていました。
中嶋香織さん、素敵なお話をありがとうございました。
参加くださった皆さん、ありがとうございました。
「ティール・グリーンが選ぶ 中嶋香織の装丁のおしごと展」は、10月30日(日)までです。
皆さまにとって素敵な本との出会いがありますように。