4月16日(日)の午後、たてのひろしさんとなかの真実さんをお迎えして、『ねことことり』のギャラリートークを開催いたしました。朝には前日からの雨も上がり、気持ちの良い春の日となりました。始まる前から、たてのさんの楽しいお話で会場は和やかな雰囲気に包まれました。
『ねことことり』は心あたたまる友情物語のようですが、実は・・・
『ねことことり』に登場する擬人化された猫には人間社会を、小鳥には自然界を投影させているとのこと。猫がこぶしの枝を山から採ってくる量は尋常ではなく、小鳥は枝がなくなっていくせいで巣が作れず、絶滅の危機に瀕している。搾取する人間に対して自然界は寛容であるのだが、それでよいのだろうか? そのような思いが『ねことことり』の物語の背景にあることを話されました。
また、この作品の猫は鼻が利きません。小鳥は猫の鼻を治したいと薬草を探してくるのですが、猫は匂いがわからなくても不自由ではないのです。相手のことを思うあまりに生じる気持ちのすれ違いを重ねながら、次第にお互いの立場や気持ちに気づいていくことの大切さも描いています。
実は、この猫にはモデルがいて、なかのさんが行きつけのギャラリーの看板猫のダミアンなのですが、鼻が利かないのだそうです。
この絵本の奥には、このような深い思いが込められていたのです。お話をお聞きしてから改めて読んでみると、いろいろな気づきがあります。
また、生き物を描くときは、季節、状況など現場で環境全体を見ることが大切で、絵描きの仕事は博物学、という言葉が印象的でした。
作品に対して真摯に向き合うお二人のお話に、会場は熱気に包まれました。
ギャラリートークの最後はなかの真実さんによる『ねことことり』の読み聞かせ。人前では初めてとのことですが、言葉を大切にしながら丁寧に読んでくださいました。
トークの後はサイン会。
たてのさんが小鳥、なかのさんが猫の絵を添えたダブルサインです。
原画の前で記念撮影
和やかな雰囲気の中にも、たてのさんから絵本や絵本業界に対する厳しい言葉もあり、いろいろ考えさせられたトークイベントでした。
たてのひろしさん、なかの真実さん、世界文化社さん、そしてご参加くださった皆さん、ありがとうございました。
原画展は4月30日(日)までです。 お待ちしています!